認定NPO法人 ファーストアクセスは2018年11月22日、欧州を代表するパワーコンディショナー(PCS)メーカー「SMAソーラー」様の協賛により、国際シンポジウム「東京炭素会議2018−最先端の太陽光発電技術 - 世界初の自立式分散型PCSおよびフィルム型太陽電池」を、東京大学の国際協力学生団体GREEN HEARTSと共催で開催しました。

プレゼンテーション

「東京炭素会議 10年の軌跡」
認定NPO法人 ファーストアクセス チーフ デジタル オフィサー (CDO) リア・ハン

国際連合が定めた17つの「持続可能な開発目標(SDGs)」における第7番目のゴールには “近代的なエネルギーが使えること”が掲げられています。つまりエネルギーは基本的人権の一つと国連にも認められており、とりわけ子供の教育における安定した光が使えることの重要性は広く知られています。しかし残念ながら世界には依然として約10億人が電気を自由に使えない状況であるのが現状です。

一方、認定NPO法人 ファーストアクセスは国内外の低炭素技術を駐日外交官などに対して事業者が丁寧に英語で紹介する国際シンポジウムとしてこの東京炭素会議を2009年から開催し、おかげさまで今年にて10回目を数えることになりました。

これまでスマートコミュニティやデジタル・グリッド、太陽光発電そして地熱など、多くの最新技術を分かりやすくお伝えして参りましたが、それとともに、イベントの収益金をもって今まで1,000個以上の太陽光発電ランプをアフリカの孤児院に寄贈してきました。これらは全て、協賛していただいたスポンサー企業様およびご来場者の方々のおかげであり、この場を借りて深い御礼を申し上げます。

プレゼンテーション

「学生による初アフリカ訪問の報告」
認定NPO法人 フィールド・リサーチャー 金川 航希

2018年3月、ファーストアクセスから初めて学生がアフリカを訪問してきました。行先はケニアの首都ナイロビで、目的はアフリカにおける現状の調査と、そして電気が使えない子供たちに寄贈した太陽光発電ランプが本当に役立っているのか、結果を見てくることでした。

すると、今まで“未電化”だと聞かされていたナイロビの孤児院が、実は送電区域に入っていたことが判明しました。ただし送電は非常に不安定であり、また多くの住民による盗電や豪雨による機器の故障もあって、一帯では停電が頻繁に発生しておりました。

しかしながら、我々がパトモス孤児院に寄贈した太陽光発電ランプは子供たちの学習にとても役立っていることが分かり、加えて勉強のほか様々な局面において孤児院を助けていることが判明しました。つまり我々がこれまで提供してきたランプは間違いなく子供たちの学習と生活に極めて重要な役割を果たしていることが証明され、この活動を今後もより続けていくべきであると、と決意を新たにした次第です。

基調講演 Keynote Lecture

「ブラジルにおける太陽光発電政策」
駐日ブラジル大使館 ガブリエラ・ヘゼンデス参事官

ブラジルは2018年6月に国内でつくられたエネルギーの87.8%を再生可能エネルギーが占めるなど、最も低炭素化が進んだ経済大国です。その駐日大使館を代表して、ヘゼンデス参事官は「Brazil and Solar Energy」という基調講演を聞かせて下さいました。

同国は水力発電やエタノール燃料車が有名ですが、一方でアマゾンの森林伐採や農地の荒廃も進行していて、政府として対策に乗り出しています。したがって太陽光発電については比率こそ水力やエタノールよりも少ないものの、設備の価格低下(約8割減)に伴って市場規模はここ2〜3年になり急拡大しており、数年間で1,000%もの伸びを記録しました。

今後も太陽光発電はブラジルにおいてより大きな役割を果たすものと推測されますが、そのためには技術開発が欠かせず、この点で日本との技術協力がますます重要になってくる、とヘゼンデス参事官は結びました。

プレゼンテーション Presentaiton

「日本でファイナンスを得るには」「太陽光発電事業を成功させる鍵」「最先端の太陽光発電技術」
ソーラー・フォー・ジャパン株式会社 代表取締役 伊集院 誠様

続いてご登壇されたのはソーラー・フォー・ジャパン株式会社の代表取締役・伊集院誠様で、まずは世界各地域の111カ国において合計容量2.7GWにのぼる分散電源プロジェクトを推進されている様子や、架台などの供給、そして設置後の管理も行っておられることをご紹介されました。

また納入先としては@商業・産業向け(主に工場の屋根など) A消費地・無電化地域向け B電力会社向けの3種に大別されることを挙げ、「数十年したら、森林などを伐採して太陽光発電設備を据え付けないかわりに、多くの工場の屋根にパネルが乗っているようになるだろう」との見通しも述べられました。

また、インドネシアのリアウ諸島州における地方電化プロジェクト事例では2016年に“ソーラー+パワー賞”を受賞されたことや、今年もバングラデシュの案件でアジア・パワー賞を受賞されたほか、国際貿易ビジネス部門において英国女王賞をご受章された事をご紹介されました。

そしてCSR活動としてソーラー・ランタンの寄贈も実施されており、日米欧において単価がおよそ500円/5ドル/5ユーロのソーラー・ランタンをそれぞれ約1,000円/10ドル/10ユーロで販売したうえで、自動的に1個が無電化地域に寄贈される仕組みを通じて途上国に寄付していることを述べられました。

太陽光発電の事業についてはJBICのファイナンスを使えば85%の補助が受けられる制度や、JCM(二国間クレジット制度)の活用もご説明されました。

続いて、プレゼンテーションの後半となるSMAソーラー・テクノロジー様のご解説に移られました。まずは企業の概要や社史を述べられたのち、主要製品であるPCSは商業用(小型・大型)そして住宅用の幅広いラインアップが揃えられているほか、オプティマイザーも製造されている事を紹介されたうえで、累計65GWにのぼる納入実績についても触れられました。

そしてトピックは当日の主要議題である「インバーターの重要性」へと移り、世界の電力系統が“中央集権型”から“分散型”へと移行する動きと並行するかのように、太陽光発電プラントにおいてインバーターが中央集権型から分散型へと技術トレンドが変わったとご説明されました。また、太陽光発電そのものについても単なる“発電”から“つくったエネルギーの消費”へと主眼が進化している点をご指摘され、このスマートになりつつある発電・消費の環境においてSMA様の優位性を示され、“再生可能エネルギーを扱う上で安さだけでインバーターを選ぶと失敗する”と伝えて下さいました。

質疑応答ではサウジアラビア大使館から日本政府のファイナンスについて質問があったほか、「アフリカにはただ機器を納入するだけでなく、技術も移転してほしい」という要望が聞かれました。なおご講演後には多くの外交官が伊集院様の前に長い列を作っておりました。

プレゼンテーション Presentaiton

「簡単設置可能な軽量低コストフィルム型ペロブスカイト太陽電池とその応用」
東芝 研究開発本部 研究開発センター長 佐田 豊様

佐田センター長からは 「設置可能な軽量低コストフィルム型ペロブスカイト太陽電池とその応用」についてプレゼンテーションして頂きました。

佐田センター長は冒頭に2018年7月の西日本豪雨や翌月のインド豪雨がもたらした甚大な被害について触れられ、「これは自然だけの災害ではなく、人為的な被害」と指摘。そのうえで「東芝が開発したフィルム型ペロブスカイト太陽電池は、現時点ではまだ商業ベースに乗っていないが、近い将来には温室効果ガスの排出減、ひいては大規模自然災害の軽減にも寄与できる」とされました。

というのも既に豪雨だけでなく様々な異常気象が起きており、そしてそれに伴う食糧生産の減少、あるいは水資源の変化など環境の全般において気候変動の悪影響が及んでいるため、人類の将来のために気候変動を1.5℃以内に抑える必要があると改めて指摘。

そして今年6月に発表された「フィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュール」について、(フィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールと比べて)高効率と薄さの両立を確率させた技術的な基礎を分かりやすくご解説されました。この技術によって重量は10分の1へと著しく軽減され、設置場所の可能性を大きく拡げたほか、柔軟性にも優れているため、設置可能な場所の形状も対応できるようになった結果、世界最大の面積とエネルギー変換効率11.7%を達成した。

今後はエネルギー変換効率20%を目指し、適用先としては過去に考えられなかった場所への太陽光発電の設置、例えばガラス窓や太陽光発電パネルの重量に耐えられなかった屋根が可能になり、究極例としては“ただ地面に敷くだけ”で発電が可能なシステムも視野に入れている、とご説明され、途上国から大きな関心を呼びました。

一方、再生可能エネルギーの新たな開発軸として水素エネルギーによる蓄電システムもご紹介され、“H2 One”というプロジェクトを通じて各地にプロジェクトを展開していると述べられたのち、低コストで低炭素な社会を実現させる、という東芝さんの研究姿勢を示して頂きました。

パネル・ディスカッション Panel Discussion

「パリ協定後の世界の温暖化政策」「太陽光発電技術の最新動向および将来動向」

<パネリスト>
駐日ブラジル大使館 ガブリエラ・ヘゼンデス参事官
ソーラー・フォー・ジャパン株式会社 代表取締役 伊集院 誠様
東芝 研究開発本部 研究開発センター長 佐田 豊様

<モデレーター>
東京大学 公共政策大学院 教授 有馬 純

最後のパネル・ディスカッションでは東京大学の有馬純教授(元経済産業省、元日本政府の首席温暖化交渉官)をモデレータ−として迎えました。

ブラジルにおいて太陽光発電の可能性を聞かれたヘゼンデス参事官は「まずは価格面が最も重要」としつつ、「2030年には再生可能エネルギーの10%にまで伸びる可能性がある」と表明。

続いて伊集院代表取締役には
「太陽光発電モジュールに価格は世界的に2004年前後から下がり始め、現在は当時から7割ほど下がっているが、太陽光発電システムの中核設備であるPCSの価格動向についてはどう思われるか?」と質問。

それに対して伊集院代表取締役は

  • ・太陽光発電システムを語る上では、PCSやインバーターや架台など 単品で議論するよりトータル価格が重要。
  • ・恐らくいま最も高いのは日本だが、それでもFIT開始当時の6年前と比べたら 設置コストは半額以下にまで下がった
  • ・ただし事業採算の改善にはイニシャル・コストの引き下げだけでなく収入増という方法もあり、例えば発電効率を大きく改善させられる「追尾式太陽光発電」を導入すれば、たとえ費用がかかっても売り上げ増で総合的に上回ることが可能となる。
  • ・従って、“架台”でも事業採算は大きく異なってくることがわかる。
  • ・とりわけ日本では土地代が高いため、こうした最新技術を使って事業採算を向上させるには大きなメリットがある。
  • ・ただし必ずしも追尾式が採算を向上させるわけでもなく、地点による精査が必要。

続いて有馬先生は
「FITなしで再生可能エネルギーが競争力を持てるようになるのはいつか?」とご質問され、

それに対して伊集院代表取締役は

  • ・太陽光発電に対するFITは当初の40円/kWhから18円/kWhに下がっており、来年には15円/kWhになる見通し。諸外国と同様に、日本でもグリッド・パリティが実現できる日も近いのではないか。
  • ・日本の太陽光発電産業では「FITが終わると太陽光発電も終わりだ」と考える輩もいるが、我々は「FITの終了が太陽光発電の本当の始まり」と考えている。
  • ・ただし日本では「工場の屋根に設置した太陽光発電設備から発電分は自家消費してはいけない」という法律があるので、そうした体制面の見直しも議論の対象となる。

そして有馬先生は東芝の佐田センター長に対して
「低炭素発電技術の開発にコミットしている東芝さんのような会社からすると、どのような政策が望ましいか」と質問。

それに対して佐田センター長は

  • ・電力の安定供給を実現するためには再生可能エネルギーだけでなく原子力や化石燃料など、電源の多様化が必要
  • ・こうした環境下において低炭素エネルギーの利用をより増やすには電力貯蔵についての政策的なバックアップが欠かせないだろう
  • ・そして今後はEVのバッテリーや家庭用の電力貯蔵装置も系統安定化に役立てるべき
  • ・ただし、これらを実現させるためには法規制の変更も欠かせないため、その点で小型の分散電源やバッテリーを活用するための政策的なバックアップが必要となるだろう
とご回答。

続いて有馬先生は飛び入りで参加してくれたイタリア大使館のエンリコ・トラヴェルサ科学技術担当官に
「イタリアは高い太陽光発電比率を実現させたが、では貴国は欧州全体における太陽光発電の発展に対してどのような役割を追っているか?」と質問。

トラヴェルサ科学技術担当官は

  • ・その通り、イタリアでは再生可能エネルギーについて先行しており、既に39%(水力を覗いても20%)の電力がREで作られている。
  • ・そして、そのイタリアでも、確かに当初はFITが重要な役割を果たしたこと事実。
  • ・他方、高い再生可能エネルギー比率を実現した裏には系統の安定化も並行して進めたことが寄与しており、天然ガス火力なども活用しながらREによる変動を吸収できる体制を構築した。
  • ・また、ブラジル人が太陽光発電の活用においてイタリアに協力してくれた事例も引用。

司会
認定NPO法人 ファーストアクセス 理事/広報部長 山本 理紗子